食事療法と運動療法だけで血糖コントロールする
食事療法と運動療法だけで血糖コントロールするのが理想的であり、そうした方針で治療を進めたい。
しかし、実際には、食事療法や運動療法だけでは血糖値は下がらず、ヘモグロビンA1cも8%以上と血糖コントロールが不十分で、薬物治療法以外に手がないということが多いのです。
そのような状態の時には、膵臓はインスリンを最大限分泌しようとして頑張っています。それが、かえって膵臓に対する負担をかけすぎ、最終的にはインスリン分泌を低下させてしまいます。
ですから、ある程度、膵臓に余力が残っている段階、つまり糖尿病の初期段階で薬物治療法を始めたほうが、膵臓に対する負担の軽減にもつながり、薬物療法の効果も期待できることが多いのです。飲み薬だけで治療可能な人も増えています。
血糖コントロールのために利用される経口薬は最近では多くの種類の薬が処方できるようになりました。
最初は単独で処方されますが、相乗効果を期待し、さまざまな薬剤を組み合わせて服薬し、うまくバランスをとっている患者さんもいます。
昔であれば、インスリン注射療法しか選択肢がなかった患者さんでも今は薬物療法だけで治療が可能になっている人も多く見られるようになりました。
薬物療法だけで治療が可能に・・・・
スルフォニル尿素剤(SU剤)
スルフォニル尿素剤は経口血糖降下薬として古い歴史を持つ安全性が高い薬剤です。
この薬剤の主な作用は、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を増加させることだと考えられており、膵臓にインスリンを分泌させるための能力が残っていることが服薬するときの条件となります。
主に効果があるのは、2型糖尿病の方で、膵臓からインスリンは分泌されてはいるものの、分泌のタイミングが遅かったり、絶対量に不足が認められるような場合です。
α-グルコシダーゼ阻害薬
α-グルコシダーゼ阻害薬は、腸管でのα-グルコシダーゼという糖質を分解する酵素の働きを阻害して分解させなくし、腸管からのブドウ糖の消化吸収を遅らせる働きがあります。
ブドウ糖が遅れて吸収されれば、膵臓からのインスリン分泌が遅れている2型糖尿病の方でもタイミングがマッチして血糖値を下げることが容易になります。
比較的軽症の方に食事療法を成功させるための補助的な薬剤として処方されることも多くあり、最近、境界型糖尿病にも使えることになりました。
また、α-グルコシダーゼ阻害剤には、水素ガスを発生する作用があり、筆者らは、それが狭心症や心筋梗塞を減らす作用を持つのではないかという学説をたて、謎とされていた機序を解明し、画期的な学説となっています。
ビグアナイド製剤
食欲を低下させる作用があるため、肥満の方や過食傾向がある方に勧められます。
ただし、胃のむかつきを起こすことがあるので、食後に服用するのが原則なのですが・・・・。
腸管からのブドウ糖の吸収を妨げるとともに、肝臓でブドウ糖がつくられるのを抑えることなどが知られて、血糖降下作用を発揮します。最近ではGLP1を増加させる作用も知られてきました。
インスリン抵抗性改善薬
インスリンが血液中に大量にあっても効果を示しにくい状態を改善し、インスリンの効果を高めることによって、ブドウ糖を細胞の中に入れて利用されやすくするのが、インスリン抵抗性改善薬です。
単剤で服用する時には低血糖を起こさず、血液中のインスリン濃度が低下する傾向を示すため、低血糖を怖がる方には安心です。
しかし、注意しなくてはいけない点が二つあります。ひとつは、脂肪が増え太るということです。約2~3kgくらい体重が増えると報告されています。
二つ目は、心不全の兆候がある方や心不全を起こしたことのある方、心臓疾患を持つ方など、体液が多く貯留することによって心臓に負担がかかる危険がある患者さんへの投与は避ける必要があります。
三つ目は、骨粗鬆症になる可能性です。アクトスを服用している人は、できれば年1回は骨密度検査をお勧めします。
速攻型インスリン分泌促進薬
服用して30分後にはインスリンの追加分泌が膵臓から認められます。従来のスルフォニル尿素剤よりも、より速くインスリンが分泌されるという付加価値が加わった薬剤と考えればよいでしょう。
また、血糖降下作用の発現が速く、作用時間が短いため、低血糖を起こしにくい性質があります。