高血圧には3タイプがあります。
高血圧は「持続性高血圧」「白衣高血圧」「仮面高血圧」の3つに分類されます。
白衣高血圧は個性の一つ
白衣高血圧は高齢者や女性に多くみられます。心配する人もいますが緊張によるもので治すことができません。個性の一つと考えてください。
白衣高血圧の人は5年後に2~3割の人が持続性高血圧になり、心肥大が起こりやすいとの報告もあります。
高血圧予備軍と考え、定期的なチェックが必要です。また、臓器の異常や肥満がある場合は、治療が行われることもあります。
仮面高血圧は脳卒中や心臓病のリスクが高い
仮面高血圧には、血圧が起床時に急激に高くなる早朝高血圧、就寝中に血圧が下がらない夜間高血圧、仕事や家庭のストレスで血圧が高くなる職場高血圧などがあります。
脳卒中や心臓病のリスクが高いため、治療が必要です。仮面高血圧のタイプは24時間血圧モニターによって分かります。
24時間高血圧モニターは白衣高血圧の確認と仮面高血圧、特に夜間高血圧が疑われる場合に役立ちます。保険適応ですが、行える医療機関は限られています。
1日のみの記録で長期間の血圧推移を知ることはできません。通常は、家庭血圧と診察室血圧により血圧を管理します。
家庭血圧は起床後1時間以内に測ります。
家庭血圧は1度に2回測定して平均値を出します。ふつう2回目の血圧は1回目より低くなります。
低い方の値だけ記録したくなりますが、1回目の血圧も必ず記録してください。というのは、脳卒中などのリスクは1回目の測定値のデータが関連しているからです。
1回毎の値に一喜一憂せず2週間、1ヶ月、3ヶ月というように長期間の変動を見る知ることが大切です。
最近は通信機能を内蔵し、診察室の端末で長期の血圧推移が一目でわかる家庭血圧計もあります。
基本は起床後と就寝前に測る
高血圧患者の7~8割は1日のうちで起床後1時間が最も高くなります。早朝高血圧の診断には、診察室では測れないので、起床後の家庭血圧が重要です。
夜間高血圧も診察室では気付きにくいため、就寝前にも家庭血圧を測るのが理想的です。
ストレスがあるときやコーヒーなどのカフェインを含む飲み物を飲んだ直後などは血圧が高くなるため、測定は避けます。
家庭血圧は、できるだけストレスがなく、条件を満たせる日に測定します。
高血圧は認知症と寝たきりの重大な危険因子
高血圧のために、失明したり、人工透析が必要になったりすることもあるといったら、驚かれるかもしれませんが、本当の話なのです。
高血圧は全身の動脈硬化を促進しますが、そのうち、細かい血管に起こるのが細動脈硬化です。
眼の網膜の血管に起こると、眼底出血を招き、失明や視力低下のおそれがあります。
腎臓の血管に起こると腎臓が萎縮して、腎機能が低下します(腎硬化症)。さらに進行すると、人工透析が必要になることもあるのです。
脳の細い血管に動脈硬化が起こると、認知症の原因になることが、分かっています。
細動脈硬化はすぐに命にかかわるものではありませんが、QOL(生活の質)を著しく低下させてしまうのもなのです。
全身の太い動脈が障害されると突然死の危険性も・・・・
細動脈硬化に対して太い血管に起こるのが粥状動脈硬化です。脳や心臓などの太い血管の血流が十分に保たれなくなったり、詰まったりするため、命にかかわります。
脳の血管に起こると、脳出血や脳梗塞、認知症、心臓の血管に起こると、狭心症や心筋梗塞、心不全の原因になります。
身体の中央を走る大動脈が裂ける「大動脈解離」も突然死を招くことがあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因にも
高血圧全体のうち95%以上は原因が特定できない「本態性高血圧」です。残りは原因を特定できるもので「二次性高血圧」といいます。
本態性高血圧の場合、男性は40歳代、女性は50歳代で発症するのが一般的です。そのため若い女性で血圧が高かったり60歳を過ぎて急に血圧が高くなったりした場合は二次性高血圧が疑われます。
二次性高血圧の原因で多いのは、「睡眠時無呼吸症候群」です。睡眠中に無呼吸を繰り返す病気で肥満の人や、もともとあごが小さく気道が狭い人におこりやすく睡眠中に「CPAP」という専用のマスクで鼻から空気を送り込む治療が行われます。
痛み止めや漢方薬によって血圧が上がることも・・・・
薬によって血圧が高くなることもあります。「非ステロイド性抗炎症薬」は痛み止めとしてよく使われる薬ですが、高齢者や腎機能が低下した人が用いると高血圧を招くことがあります。
漢方薬に含まれる「カンゾウ」にも血圧を上げる作用があります。ステロイドホルモン、女性モルモン製剤、免疫抑制剤などが原因となることもあります。
これらの薬による二次性高血圧は原因となる薬の使用を中止したり、降圧薬を服用して血圧を下げます。
外科手術で根治できる二次性高血圧
別の病気によって引き起こされる「二次性高血圧」には、腎臓など臓器の血管の異常のほか、服用している薬に誘発されたものなど、さまざまな原因病があります。
その中には、副腎の異常によるものや腎動脈の狭窄によるものなど、外科手術で治せるものがあります。
本態性高血圧と診断されて、降圧薬の服用や減塩を始めたものの血圧が下がらず、薬を何種類も飲んでも正常値にならない人は、二次性高血圧を疑い、原因病を探す必要があるかもしれません。
副腎や腎動脈などに異常がある病気が中心
手術で治せる代表的な二次性高血圧は、「原発性アルドステロン症」が原因病の高血圧です。原発性アルドステロン症は、副腎の腫瘍のために、血圧を上げてしまうアルドステロンというホルモンが多量に分泌される病気です。
腫瘍は開腹手術の他に、身体への負担が少ない腹腔鏡手術ができる場合があります。また、やはり主に副腎の異常でホルモン分泌が過剰になる「褐色細胞腫」や「クッシング症候群」が原因病の高血圧も、手術が可能な場合があります。
腎臓に向かう動脈が狭くなる「腎動脈狭窄症」で薬物療法の効果がない時は、腎動脈にカテーテルを通し、狭くなった部位にステントというチューブを置く手術(経皮経管血管形成術)やバイパスを作る手術をします。
肺への動脈が血栓で詰まる「肺血栓症」で薬物療法の効果がなければ、手術での血栓除去(肺血栓摘除術)や、肺の状態が極めて悪ければ肺移植をすることもあります。太い動脈血管が炎症を起こす「高安病(たかやすびょう)」による高血圧で血管の詰まりが強い時は、血管バイパス手術をすることもあります。